地下鉄東山線の栄駅から徒歩8分
30年前に開業した、名古屋の栄で最も歴史のあるフィリピン料理店。
昭和の雰囲気を残すビルの1階廊下の突き当りにある。
18:00ごろに入店するとフィリピン人女性2人が仕込みやらで忙しそうに動き回っている。
テーブルにあるメニュー表を開き、料理の説明文を読みながら、本日の晩ごはんをイメージする。
40軒のフィリピン料理店巡りを通してメジャーな料理は食べている(と考える)ため、おそらく食べたことがない料理のライン(Laing、1,000円)を選んだ。
説明文では『里芋の葉のココナッツクリーム煮込み』とのことであるが、青野菜がたっぷりの写真にを見て、体にはよさそうぐらいのノリで頼んだので、どんな味か想像がつかない。
注文してしばらくして料理が出てきた。
途中、カウンターの奥で煮込みを電子レンジで温めているのに気が付いてしまった。少々残念なのはなぜだろう。
しかし、どうこう言うのは食べてみてからの話である。
白いお皿にたっぷり盛り付けられた里芋の葉の煮込みは、地味さMaxのビジュアルである。
SNS全盛の時代、この写真をネットにアップしても決して共有されない(失礼)と確信。
一口、食べてみる。
と、先入観を裏切られ、気持ちよくカウンターパンチを食らった。
ココナッツクリームの甘味を感じる、と同時に青菜の苦みと渋みが口にジワリと広がる。
里芋の葉は、それだけだと本来はかなり苦いのではなかろうか。しかし、おかげで丁度よい。
さらに、『本場ではこうやって食べる』とスタッフの女性からいただいた刻み赤唐辛子を加えてみる。
すると、苦み×甘味×辛味でもう一段階、重層的な味わいに進化!
掛け算のように、個々の味の主張の強さが互いに活かしあっている。
食べ始めようとした頃にお店に来たグレーヘアが見事な初老の紳士。
日本人と見受けられるが、経理業務を行ったり、スタッフさんから社長と呼ばれてたので声をかけてみると、お店のオーナーでいらした。
お店を開いて30年ということで、開業の経緯を伺った。
当時、知り合いに頼まれ、騙されて日本で夜の仕事をすることになったフィリピン人女性を母国に送り返したが、その際カソリックの司祭にお世話になったそう。
そこでその司祭に何か恩返ししたいと伝えたところ、フィリピン人が気楽に話せる場をつくってはどうか、とのアドバイスを受けて始めたのが当店。
2‐3年前まではクリスマスには教会の司祭が出張してミサを開いており、お店の外まで人があふれることもあったとか。
オーナーのご年齢は70代とのことだが、はつらつとした話しぶりとお姿からは、とてもそうは見えない。
オーナーと話し、料理を食べている間にも来店客は増え、フィリピン人数人のグループが店内奥のマリア像の手前の席に座り、ホステスとお客さんと思しき二人組が入口近くのテーブルについた。
自分がフィリピン関連事業での起業を考えているので、大先輩であるオーナーにこの2019年4月に始まった特定技能ビザとフィリピン人労働者の増加可能性についてもお考えを伺った。
オーナーは今回新設のビザに対して懐疑的で、期待される人手不足解消の効果は薄いだろうとの見立て。
当ビザ取得に日本語の要求水準が高く、しかも苦労して取得したところで在留期限付きとあっては、英語に堪能で他国にも選択肢のあるフィリピン人がわざわざ日本に来ないのではないかとのこと。
純喫茶のような落ち着く雰囲気。
店名のサンパギータ(Sampaguita)とはフィリピンの国花ジャスミンの花。
おりしも平成は30年が過ぎ役目を終えたこの4月。
平成とともに始まった当店であるが、令和の時代も末永く繁盛してほしい。
メニュー例:
ライン(里芋の葉のココナッツクリーム煮込み) 1,000円
ライス 200円
住所:名古屋市中区栄町4丁目11‐10 東京ビル1F
営業:5:00PM‐5:00AM 年中無休
電話:052 795 7501
ご参考: